日本近海のカツオは、太平洋岸を春から秋にかけて移動するが、漁獲する時期によって脂肪量が変化します。4〜7月にかけて漁獲したカツオを原料にする鰹節を「春節」・「夏節」、8〜10月のものを「秋節」と呼びます。
春節は脂肪が少なく鰹節の製造に適しますが、秋節は脂肪が多く品質が劣ります。また、春節は日乾の時期が真夏となり、乾燥工程も最適の時期に当ります。
以上の点を地域で見ますと、沖縄から伊豆七島にかけて漁獲されるものが春節の時期に当り、東北沿岸域のものが秋節に当ります。昔から薩摩節・土佐節・焼津節・伊豆節は上物、三陸節(東節)は劣ると言われてきたのも、脂肪の含有量によるものです。
ただしこれは、近海もので鰹節を作っていた時代の事で、漁場・漁法・冷凍技術の発達による遠洋ものの漁獲増大で、現在は一概に当てはまらなくなっています。カツオ生肉の成分分析表より見ますと、近海より遠洋・雌より雄のほうが、脂肪が少ないことが見てとれます。
| 生肉百分中(%) | 固形物百分中(%) | ||||||
| 水 分 | 粗たん白質 | 脂 肪 | 灰 分 | 粗たん白質 | 脂 肪 | 灰 分 | |
| 内地近海産雄 | 69.85 | 25.5 | 3.52 | 1.41 | 83.65 | 11.68 | 4.68 |
| 同 雌 | 68.77 | 25.53 | 4.33 | 1.38 | 81.83 | 13.83 | 4.42 |
| 内地遠海産雄 | 70.83 | 24.82 | 2.99 | 1.36 | 85.09 | 10.25 | 4.66 |
| 同 雌 | 69.41 | 25.5 | 3.67 | 1.42 | 83.36 | 12 | 4.64 |
| 本節 | 3kg前後を境に大きいもは、3枚に卸した左右の2身をさらに背側・腹側に切り分けて、背節(雄節)・腹節(雌節)各2本、計4本の節を造ります。 |
| 亀節 | 小さいものは、3枚に卸した左右の2身より、2枚の節を造ります。出来あがった節の形が亀の甲羅に似ているので、亀節と呼びます。 |
全国各地で生産される鰹節は、その産地ごとの製法に特徴があります。現在は、静岡県焼津の製造方法を基本にして制定された焼津節(改良型本節)と、鹿児島県の枕崎で古来より受け継がれている薩摩節(薩摩型本節)があります。焼津節が改良節として中心的な製造方法となったのは、伊豆式と土佐式の長所を取り入れたことによります。
焼津節(改良型本節)は、「鰹節の製造方法」に準じます。形態的な特徴は、頭の部分がくびれていることです。これは、鰹節を保存する時に縄で吊るし易いように、このような形にしたという説が有力です。
薩摩節(薩摩型本節)の大きな特徴は、生切りで頭を落とす時に、約45度の角度でスパット切り落とします。前述のように、改良節はくびれているので、すぐに見分けがつきます。また、製造工程の中で大きく違うのは、改良節が煮熟後に水槽の中で骨抜き・皮を剥きを行うのに対して、薩摩節は、生切りの段階で、皮を剥き・骨を包丁でそぎ落とします。
| 手火山式 | 2mほど掘られた穴の上に、骨抜きが終了した節をならべたセイロを数枚重ねて置きます。下から薪を燃やして熱気と燻煙をあてます。あたり具合が均一になるように、途中でセイロの上下および左右を入れ替えます。 |
| 炊納屋式 <タキナヤ> |
部屋全体を階層別に区切られた焙乾室にして、熱気と燻煙を充満させた中で焙乾をします。焼津地区では急造庫<キュウゾッコ>と呼んでいます。 |
| 焼 津 式 | 焙乾室の中に燻煙をファンで強制的に循環させ、焙乾をします。 |
焙乾工程の初期の、一番・二番火の段階では、表面についた雑菌を殺し、ネトといわれる雑菌の集団の発生を防ぎます。また、鰹節独特の香りを生成します。この香りには、直接的なものと間接的なものがあります。直接的な香りは、燻煙に含まれた成分が付着したものです。間接的な香りは、後工程でつけられた鰹節優良カビが、燻煙成分の溶け込んだカツオの身や油に作用してつくられます。
その他に、燻煙中のフェノール物質によって、節の油の酸化防止がはかられます。魚肉は酸化し易い脂肪酸を多く含んでいるので、空気に触れるとすぐに酸化したり、油やけをおこします。
以上のように、焙乾には、殺菌・香りつけ・品質保持と、重要な働きがあります。
裸節に発生するカビは、色々な菌種のカビが生育しているのではなく、大部分が鰹節優良カビと呼ばれているEurotium属(ユーロティウム)のカビです。
一番カビとして最初に発生するものは、色が青いことから青カビといわれていますが、菌学的な青カビPenicllium属(ペニシリウム)ではなくて、同じEurotium属のカビです。
その後、二番・三番・四番カビとつけて行くに従って、青色から赤茶色に変化します。また、節表面の脂肪分の違いや、温度・湿度等の環境要因により、部分的に白くなることがありますが、これはカビの状態変化であり、ほとんど同じカビです。
しかし、環境条件が極端に異なってくると、他のカビが発生してしまい、色が変わっている場合があります。種類によってはカビ毒を持っているので、気をつけなくてはなりません。
昔は自然発生によりカビつけを行いましたが、現在は、前出のユーロティウム属のカビを純粋培養して常に確保しています。一番カビを発生させるときに人為的にカビを噴霧して、最初から優良カビによって製造しています。
(株)にんべんが分離・研究し、日本鰹節協会に供給している鰹節優良カビ
Eurotium herbariorum (
一般の方が、鰹節の良し悪しを見分けるのは簡単ではありませんが、外観から見たときの目安として例を出しますと、次のようになります。
昔は手漕ぎの舟で漁に出て、近海の魚を獲って食べていましたが、当然のこと、冷凍設備など無く、腐敗の対策が色々と取られました。煮たり干したり加工されましたが、これは単に腐敗防止のほかに、予期せぬ効果を生みました。
カツオをはじめとして、サバ・ソウダカツオ・アジ・イワシといった赤身の回遊魚は、その強い行動力のため、魚肉に大変活発な酵素を含んでいます。そのため、白身魚に比べて「生き腐れ」などといわれるくらいに、鮮度の落ちるのが早いです。
カツオなどこれらの魚の旨味とされる「イノシン酸」は、魚が生きているうちは肉質内には存在せず、魚が死ぬと筋肉中の酵素がただちに活動を始め、ATP(アデノシン三リン酸)を分解していきます。そうした「自己消化」の過程のある一時期に、イノシン酸が形成されます。旨味成分であるイノシン酸は、水分が多い状態では細菌などによりさらに分解が進み、イノシン酸から次は苦味や渋味の「イノシン」や「ヒポキサンチン」になり、さらに尿酸や尿素が増加してきていやな臭いがするようになり、やがて腐敗へと進んでいきます。
イノシン酸が一番たくさんできている時期が、ちょうど鮮度が良いといわれる期間の末期で、死後硬直が消失した直後にあたります。漁法にもよりますが、死後1時間から7、8時間の間に、これだけの変化が進むとされます。ところが、魚を煮るとこの自己消化を進める酵素が失活され、そのままの状態にとどめておくことができます。つまり、イノシン酸の多い時期に煮ることにより、旨味が多い状態がつくれます。
しかし、煮たままの状態では、前述のように水分が多いので、細菌などによりイノシン酸が分解されてしまいます。煮た後に、水分除去の加工を行う鰹節は、旨味の保持の上で理にかなった製造方法といえます。
鰹節の大敵は、湿気と害虫です。
| 湿気 | もともと鰹節はカビをつけて作られているのですが、この「鰹節優良カビ」と呼ばれるユーロティウム属のカビは、カビの中でも乾燥して水分の少ないところに生えることができる特性を持っています。水分含有量が18%以下の、乾燥度が高い鰹節には、 他のカビや酵母菌・腐敗菌は発育できず、鰹節優良カビの独壇場となっています。 |
|||||||||
| 害虫 | 鰹節につく害虫は、カツオブシムシの幼虫で、「ガイダ」「ゲエタ」と呼ばれます。カツオブシムシは、甲虫目カツオブシムシ科に属する昆虫の総称で、日本にはヒメマルカツオブシムシ・ヒメカツオブシムシ・トビカツオブシムシなど約20種類がおります。
|
![]() |
写真.ケナガコナダニ |
カツオブシムシは、鰹節や煮干などの動物性の乾物類や、純毛のセーターや毛皮等の衣類も食べます。ダニは、鰹節の表面のカビを食べ、赤茶色した鰹節の地肌がさらけ出された状態になってしまいます。
鰹節の保管方法は、以下の通りです。鰹節の大敵であるカビ湿度と害虫の対策といえます。