堤先生の子供の栄養学

相模女子大学栄養学部教授 堤ちはる先生の子供の栄養学コラム全5回シリーズ

堤ちはる 相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授

相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了
東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了、保健学博士、管理栄養士
青葉学園短期大学専任講師、助教授、その間米国コロンビア大学医学部留学、
恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部 栄養担当部長を経て、2014年より現職

近著(共著)
・基本保育シリーズ 子どもの食と栄養(中央法規出版、2016年)
・助産学講座 母子の健康科学(医学書院、2016年)
・実践 保育学(小児医事出版社、2014年)
・新訂版 やさしく学べる子どもの食(診断と治療社、2012年)ほか

委員歴(厚生労働省)
・「社会保障審議会児童部会保育専門委員会」委員(2015~現在に至る)
・「乳幼児栄養調査企画・評価研究会」委員(2014~2015)
・「保育所における食事の提供ガイドライン作成検討会」座長(2011~2012)
・「児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会」委員(2009~2010)
・「授乳・離乳の支援ガイド策定に関する研究会」委員(2006~2007)ほか

  • 第1回 賢いママの『無添加』と『味付け』
  • 第2回 大人と一緒 簡単離乳食
  • 第3回 手づかみ食べはなぜ大事なの?
  • 第4回 離乳完了後の食事はどうするの?
  • 第5回 子どもの偏食の捉え方

第1回  賢いママの『無添加』と『味付け』

icon 赤ちゃんの味覚の発達はいつ頃からなの

 お母さんのお腹で育って(在胎)2、3か月の胎児は、口の中の構造がほぼ完成して、舌の表面にある味を感じる「味(み)蕾(らい)」もできています。そこで胎児は生まれる前から、お母さんの羊水の味を感じていると思われています。
 生後間もない赤ちゃんに、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の基本5味を与えると、それぞれの味で顔の表情の変化が起こります。このことから、赤ちゃんは早い時期から味覚を識別する能力を持ち、顔の表情から甘味、うま味は、本能的に好まれる味と考えられています。

icon 母乳を味わう赤ちゃん

 母乳の成分は、お母さんの食べた物によって味が変化します。例えばカレーやにんにく料理を食べた後に授乳すると、カレーやにんにくの風味をもつ母乳が出るとされています。また、母乳は1回の哺乳でも飲み始めから飲み終わりまでに、糖分や脂肪分の割合が変化します。そこで、赤ちゃんは、離乳食が始まるよりずっと前から、味の変化を感じる敏感な味覚をもっていると考えられています。

icon 離乳食の味付けはどうしたらよいの

  離乳開始は、一般的に5、6か月頃です。離乳開始から1か月位は食品素材の味だけで調理しますので、調味料を使う必要はありません。例えばじゃがいもであれば、皮をむいて茹でて柔らかくした後、つぶしてゆで汁を少量足してなめらかにして与えます。
 離乳を開始して1か月を過ぎて、離乳食に少し慣れたら、こんぶやかつお節などからとっただし汁を使って調理すると、素材本来の味にだし汁のうま味がプラスされ、さらにおいしさが引き出されていきます。
 「だし汁の取り方がわからない」「時間がかかりそう」とだし汁を敬遠なさる方もおられるかもしれません。しかし、最近は簡単にだし汁が取れる製品もありますので、利用されてもよいでしょう。

icon 離乳食を食べたがらない場合には

 調味料を使わずに素材の味だけで、あるいはだし汁の味だけで作った離乳食をよく食べる赤ちゃんなら、調味料を使って調理する必要はありません。しかし、離乳食を食べたがらない子どもが味をつけることでよく食べるようになる場合があります。素材のおいしさが、食塩、しょうゆ、みそ、砂糖などの調味料を少量使うことで引き出されるからです。離乳食調理に調味料は使ってはいけないのではなく、素材本来の味を少量の調味料で、よりおいしくして赤ちゃんの味覚を育てていくことが重要です。
 なお、離乳食のおいしさは、味付けだけではありません。誰と、どのような雰囲気で食卓を囲むかなど、食事が楽しく感じられる環境作りにも配慮したいものです。

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