鰹節の削り加工について

1. 鰹節の削り加工

昔のご家庭では鰹節をカンナなどで削って使用していましたが、現在はあらかじめ削り加工された、パックの削り節が主流となっています。削りぶしは、食品表示法で定義されています。

※カツオ・サバ・マグロの削りぶしには2種類あります。カツオを例にとって説明すると、「かつお削りぶし」は焙乾の工程が終わった「荒節」を原料とします。「かつおかれぶし削り」はかび付けと日乾の工程を2回以上行った「枯節」を原料とします。かび付け、日乾工程により、鰹節のうま味が凝縮するので、鰹節本来の風味は、「かつおかれぶし削り」の方が優れているといえます。

2. 削り加工品の変遷

削り節

大正元年（1912）、広島県福山市の海産物商、安部和助氏が、煮干しの節（当時は煮干しの削り節を花かつおと呼んでいました）を機械的に削り、紙袋や紙箱に入れて「削り鰹」の商品名で発売したのが最初です。大正10年頃には、300人の職人が毎日20トンの煮干しを削り、容器の袋貼りを副業にする者だけでも200〜300人もいたそうです。最初は煮干しからスタートしましたが、その後、鰹節も削られ「花かつお」の呼称で現在に至っています。

削り節の出現で消費者の労力は軽減されましたが、日持ちと味に問題がありました。削ると節に含まれる脂肪がすぐに酸化するのと、その酸化により生成される過酸化物の影響で2次的な作用が同時に進行し、色素・タンパク質・香気成分などが変化し風味劣化を起こします。削り節は表面積が大きいので、酸化の影響を受けやすく、劣化のスピードは非常に早くなります。

パック

料理屋では「鰹節は客の顔を見てから削れ」と言われるように、削り立ての鰹節は風味がよく、おいしいものです。昭和44年（1969）、品質が劣化しやすいという削り節の弱点を解決する商品が、当社より「フレッシュパック」の商品名で発売されました。開発責任者の新海豊一は商品開発について、「削り節は包材との闘いだった。風味や食感を残しながら、カビや害虫の進入からいかに削り節を守るか。また、包材の性能が良くても、袋の中に空気が含まれていると油脂が酸化し、色素が変化してしまう。削りたての品質を維持するためには酸素を除去し、不活性ガスによる置換包装しかなかった」と述懐しています。

その後、ガスバリア性・防湿性に優れた3層積層フィルム（外側からポリプロピレン・ビニロン・ポリエチレン）が開発されて包材に用いられ、袋内の酸素を除去するために不活性ガスを注入しています。開封後は使い切るのを目安に3～5gの小袋包装としていますが、包材については、技術力の進歩に合わせて新しい素材が次々に開発されてきています。

不活性（窒素）ガス入り削り節

日本に登場したばかりの頃の削り節は、酸化防止対策が施されていなかったので、前述したようにすぐに品質の劣化が進んでしまいました。酸化の要因は空気中に含まれる「酸素」によるものですが、不活性ガス置換で酸素を追い出すことにより、品質の保持が可能になりました。消費者の手元に渡り開封されるまでは、「フレッシュ」な状態を保っています。現在では メーカーによって、20・30・50・100 gとさまざまな内容量で流通していて、業務用には500g・1kgと大きなものもあります。ただし、一度開封したものは酸素が侵入してしまうので、なるべく早く使い切ることが大切です。