かつお節塾

カツオと鰹節

カツオの生態

「下り鰹(戻り鰹)」という言葉もあるように、群れで海を移動する生態を持つカツオ。群れで海を移動することを「回遊」といいますが、その回遊の移動の様子など、意外と知らないカツオの生態をご紹介します。

学名
Katsuwonus pelamis (Linne) スズキ目 サバ科

地方名
マガツオ(高知・長崎・鹿児島・東京)、ホンガツオ(壱岐・玄海)、スジガツオ(和歌山・高知・下関)、カツ(宮城・福島)、カチュウ(沖縄)、マンダラ(北陸)

1. 産卵

 カツオの卵は海水より比重が小さく、海面に分布する浮性卵です。体長約40cmのカツオなら10万粒、体長75cmのカツオなら200万粒が1回の出産で産み出されます。卵の直径は約1mmで、2日程度で孵化します。

 仔魚(右写真)は、頭が大きく吻(ふん)と呼ばれる口の付近が長く突き出していて、口裂が大きく体長の4分の1ほどもあります。これは魚食魚類(魚を食べる魚類)の稚魚の特徴です。産卵水域の中心は亜熱帯〜熱帯の太平洋の中央水域ですが、全体的に広い範囲に及びます。

仔魚

2. 成長

カツオの幼魚の成長はきわめて早く、1ヶ月に40mm以上成長します。生後1歳で尾叉長(びさちょう/上あごの先端から尾ビレの中央の最も窪んだ部分までの長さ)が31~44cm、2歳で59~65cm、3歳で64~75cm、4歳で70~83cmとなります。成長状態は「瀬付群」(4.群態参照)と回遊群で異なり、一般に回遊群の方が成長するのが早いです。

3. カツオの日本近海への回遊

日本近海におけるカツオ回遊と季節による主漁場の分布

日本近海におけるカツオ回遊と季節による主漁場の分布(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 FRANEWS 2013.3 vol.34 P10の図1を引用)

 カツオの回遊に関する調査、研究は、耳石の分析やICタグ(アーカイバルタグ)による標識放流の成果により、より詳細な回遊生態が解明されることが期待されております。 現時点で判明している日本近海への北上ルートは次の4ルートと考えられています。(1、5)

① 黒潮沿いに北上する群(トカラ周辺海域止まり)
② 九州パラオ海嶺沿いに九州・四国・紀伊半島沖に北上する群
③ マリアナ諸島から小笠原諸島、伊豆諸島沿いに北上する群
④ 房総半島の東方沖に北上する群

 「カツオは黒潮に乗って来る」といわれますが、幾分に文学・詩的表現です。カツオは受動的に黒潮に乗るのでは無く、浮き袋の未発達のカツオは一生止まらずに能動的に回遊をしております。図は文献1に記載されている日本近海におけるカツオの回遊と季節の主漁場の分布を現わしたものです。但し、各ルートは定まったものではなく、北上ルート海域の水温分布(特に19℃以下の冷水塊)によっては、滞留したり迂回ルートをとり漁場は常に変動をします。

 熱帯海域から亜熱帯海域、中南海域への仔魚(しぎょ)の移動については、サイズ上、上記の標識放流調査の対象とはなり難く、仔魚、稚魚、幼魚、※の移動と成長については、不明な点が多く、今後の耳石サンプルの輪紋分析の成果が待たれるところです。(3)
※カツオの仔魚は10mmFL以下、稚魚10~100mmFL、幼魚100~250mmFL、未成魚250~450mmFL、成魚450mmFL以上と報告をしております。FLとは2.成長で述べた「尾又長」のことです。

 「初ガツオ」は春~初夏に日本近海に北上回遊してきたカツオをさします。熱帯海域~亜熱帯海域は比較的に餌は乏しいため、この時期のカツオはまだ身に脂が乗っておらず、かつお節原料としては適しています。餌の豊富な黒潮と親潮の混合海域からさらに親潮流域に回遊し、秋口に日本近海で獲れるカツオは「戻りカツオ」(トロカツオ)と言われ脂は乗り、生食には美味しいのですが、かつお節原料には適しておりません。(2)

 黒潮と親潮の潮目から混合海域付近に北上して来たカツオはそのまま混合海域から親潮海域に回遊せずに、体を適応させるために滞留をします。特に潮目付近の黒潮の舌状暖水塊の張り出し(ストリーマ)付近に漁場が形成されることがあります。また、滞留中に成熟した成魚は北上せずに亜熱帯~熱帯海域に戻り、産卵活動に入るとされております。(2)

 熱帯~亜熱帯海域のカツオは全て、北上するわけではなく、耳石の輪紋よりの解析により、約50%を超える群が北上し、日本近海の混合海域で大きく成長し、これらの北上群が産卵海域に戻ることにより、豊富なカツオ資源量を形成する一つの要因とも言われております。(3)

4. 群態

カツオは典型的な成群性魚で、群れを作って行動します。以下に群れの種類を記します。

表.群れの種類
素群<スナムラ> カツオだけで他の随伴物のない群れです。
鳥付 エサを横取りしようと海鳥がその上を舞っている群で、漁船がカツオ群の存在を知る手がかりとなります。海鳥の種類はハワイ水域では、オナガミズナギドリ・セグロアジサシ・クロアジサシで、陸地に近くなるとカツオドリ・グンカンドリが多くなります。
鮫付・鯨付 ジンベイザメと一緒に泳いでいる群を鮫付、クジラと行動をともにしているのを鯨付といいます。
木付 流木などの漂流物の下にいる群を木付といいます。この習性を利用して、パヤオという人工の漂流物を流し、それにつくカツオを漁獲する漁法があります。
瀬付 大洋の島や暗礁などで、海潮流がよく通り水温が高く、沿岸水(沿岸に近い部分の水)の影響が少なくて、天然のエサが豊富な離島や礁(海面付近、あるいは水深20mより浅い岩石または珊瑚礁)の周りに、一年中にわたって生息します。この群は大型魚または成熟魚で占められますが、個体は割合に痩せています。日本近海では、南西諸島・豆南・小笠原諸島の周りに見ることができます。

5. 食性

カツオの群れは、エサを摂る時に統制のとれた行動をします。カタクチイワシなどの群を見つけると、横一列に並んで追いつめ、包囲していきます。逃げ場を失ったイワシは団子状に密集し、次第に海面が盛り上がります。これを餌床といい、カツオは四方から貪り食います。カツオの食物はさまざまで、水域によっても違います。

表.カツオの各水域における胃内容物
水域 種類
東北海区 カタクチイワシ、カタクチシラス、イカ類、オキアミ類
伊豆諸島水域 カタクチイワシ、カタクチシラス、イカ類、サバ類、オキアミ類、エビ類
小笠原水域 トビウオ類、カツオ幼魚、イカ類、アイゴ科、イットウダイ科
四国南岸水域 マアジの幼稚魚、サバ類、イカ類、エビ類、ヨコエソ科
バリンタン水域※ イカ類、アジ科
トカラ・沖縄水域 サバ類、カツオ幼魚、ソウダカツオ類、トビウオ類、フグ類、カワハギ類、エビ類、カニ幼生
五島水域 カタクチイワシ、マアジ

※台湾とルソン島との間の水域。

6. 寄生虫

 近海で漁獲され、冷凍せずに水氷で持ち帰られたカツオには、必ず寄生しているといってよいのがテンタクラリアとよばれる寄生虫(条虫類)の幼虫です。米粒くらいの大きさの白い虫で、主にハラモ(ハラス)に多く見られます。この虫が生きているのは、生カツオの証拠です。冷凍にすると死に、肉眼で見つけにくくなります。人間に害はなく、食べても問題はありません。

 他に、肝臓や胆嚢の付け根にいるDidymozoidae又はディディモゾイド類(吸虫類)・腹の皮膚についているアニサキス(線虫類)が寄生します。アニサキスは体長19~36mmで、人間の胃や腸管に侵入し激しい腹痛を起こします。治療は胃壁などにもぐりこんでいる虫を、内視鏡で直接摘出します。

【参考文献】
1) 国立研究開発法人 水産研究・教育機構 FRANEWS (2013)Vol.34:8-21
2) 二平 章 (1996) 潮境域におけるカツオ回遊魚群の行動生態および生理に関する研究 東北区水産研究所研  究報告 No58:137-233
3) 嘉山定晃 (2006) 西部太平洋におけるカツオ当歳魚の成長と回遊生態に関する研究 東京大学 農学部水圏  生物科学専攻 博士論文 1161020
4) 落合 明、田中 克 (1998) 新版魚類学(下) 恒星社恒生閣
5) 清藤 秀理 (2016) カツオ 中西部太平洋 国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ
6) 矢部 博 (1955) 西部太平洋における稚魚の研究ーⅠ.カツオの後期仔魚 日水会誌 20(12)P1054-1059

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